CYLINDER HOUSE 1995

   ユニバーサル住宅
 
シリンダーハウスは1995年、蛯名紀之の自邸を建築家山中新太郎氏により設計され建てられた住宅です。
 この住宅は蛯名本人と大病を患い右半身麻痺と言語障害の後遺症を負った母親の2名が生活する事を前提に設計されています。
 
ユニバーサルデザイナーでもある蛯名がインテリア什器のデザインを担当し障害を持ち、車椅子での生活を余儀なくされている母親が生活できるように最大限配慮してデザインしました。

 ここで大切な事は、障害を持つ住人を配慮する余り、デザイナーとしての造形意欲を犠牲にすることなく反対に意匠にこだわるあまりに機能性を無視する事も無いように最大公約数を探りながら両方を充足させる事でした。
 バリアフリー、ユニバーサルデザインが叫ばれ始めている昨今ですが、介護を目的とするあまりに介護マシーンの様な機械仕掛けの什器だらけのまるで工場の様な家だったり、バリアフリーとは名ばかりの体裁だけ整えたけれど障害を持つ住人に全く立たない住宅だったりすることが多い中、この住宅は自信を持って真のユニバーサル機能を備えた住宅であると言えます。


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INTERIOR

 

 

 
 
 
 
 

        

       KITCHEN
 
キッチンのデザインで一番気を使った部分は車椅子での使用が容易で有るという点です。
 既存のシンクはキャビネットの中に納める事が前提となって居ますので裏面が仕上がって居ない物ばかりでシリンダーハウスのキッチンには向いて居ませんでした。かといって高額な特注品をオーダーする事もまた負担になります。
 そこでいろいろ検討した結果、キッチンシンクとして既製品を選ぶのではなく何か転用ができる他の製品を探すことにしました。そこで見つけたのが業務用のミキシングボールです。このミキシングボールの最大の物が440φの大きさがある。もちろん裏面も仕上がって居ますので車椅子が入るようにシンクガ露出しても違和感は有りません。何よりの魅力は価格です。通常のシンクに比べ半分の価格で収まりました。

 ステンレス工場に頼んで水栓金具を取り付けていただいて1個では容量が少ないので2個取り付け完成しました。

 意匠上は住宅のデザインが外装にガルバリウム鋼板という金属素材を使ったモダンで個性的なデザインなのでそのめーじを損なわないようにステンレスを多用してモダンな雰囲気にまとめました。

 ミキシングボールという通常シンクに使用しない物を用いた事も意匠上個性を際だたせ、シリンダーハウスに調和するキッチンにまとめられました。

 
   
     

     
 

KITCHEN STORAGE

 キッチン収納にも車椅子で使用する事を最大限考慮しました。
 よくバリアフリー住宅に大がかりな機械仕掛けで高い位置から降りてくる収納ボックスが取り付けられた事例を見ることが有りますが、電気仕掛けでは万が一停電の時には使えなくなる事も配慮する必要があると思います。停電だけでなく操作ミスなどで危険な状況に使用者がさらされる事もあり得ます。
 私はユニバーサルデザインを考えるとき極力シンプルで特別でない方法を探します。大がかりな機械仕掛けの製品は購入の時やそれから後のメンテナンスに大きな経済的な
負担を強いるからです。
 大がかりな機械を使わなくても開き戸を引き戸に変えるだけで車椅子でも使いやすい収納になるし、大きな扉で床面から天井面まで全て収納スペースにすれば一番使いやすい高さに車椅子のままで物の出し入れができる収納に成ります。キッチンで皿を洗い、それを車椅子で収納まで運びしまうという一連の行為がこのキッチン収納では楽に行うことができます。
 バリアフリーとはちょっと物の使い方を違う方法にするだけで有効な場合の方が多いと私は思います。そういう意味でこのキッチン収納は私の思想を表現できたよい事例となりました。


 
     
 

BATH ROOM

 トイレと浴室は兼用で一番配慮した事は排水用に床面に段差や溝を付けてしまうと車椅子が脱輪してしまうおそれが有るという点です。
 そこで床をフラットに保つ為に排水溝にグレーチングでカバーしました。この方法を採用したおかげで完全な水切りとフラットな床を両立させることができました。